QuitMate QuitMate
日本語

オナ禁でテストステロンが増えるという幻想

ポルノ Read in English

夜の机の上、古い研究論文と光るスマートフォン

2011年、アメリカのウェブ開発者が、中国の論文をきっかけに r/NoFap というコミュニティを立ち上げた。

論文には、男性が7日間禁欲すると7日目にテストステロンが +145.7% 上がる、と書かれていた。彼自身、10代から続くポルノ依存に悩んでいた。「だったら自分も試してみよう」と数人の仲間と始めたコミュニティは、半年で1万人、1年で3万人を超えた。

それから10年が経った2021年12月、その論文は撤回されている。

だがコミュニティは残り、「7日禁欲でテストステロンが +145.7%」というフレーズだけが、論文から切り離されて、ネット上を回り続けている。

テストステロンよりも、勃起不全

2016年の医学論文は、若年男性の勃起不全が急増していることに注目している。これまで原因とされてきた加齢や血流、ストレスでは、この急増を説明できない。原因として疑われているのが、過剰なインターネットポルノ消費だ。複数の臨床ケースで、ポルノ消費を中断すると勃起不全が改善することが報告されている。「テストステロンを上げる」より、「勃起不全にならない」方が、ずっと切実な問題だ。

2014年のケンブリッジ大学の研究では、強迫的な性行動に困っている人と、そうでない人にポルノを見せ、脳の活動を比較した。薬物依存者が薬物を見たときに反応する脳の領域が、前者ではポルノを見たときに同じように反応していた。 脳のレベルで、ポルノへの強迫的な反応はコカインやアルコールへの反応と似た構造をしていることになる。

ポルノは、依存形成に都合が良すぎる

いつでも、どこでも、無料で、無限に手に入る。新しい刺激も尽きない。

2007年頃、無料のポルノ動画サイトが登場した。それまで雑誌や DVD が中心だった供給は、そこから「無料で、無限に、新しい刺激も尽きずに」手に入るものに変わった。

依存研究の枠組みで見ると、これはかなり都合の悪い環境だ。アルコールが「24時間365日、自宅の蛇口から無料で出てくる」状態になっていたら、依存者の数は今よりずっと多かったはずだ。ポルノはその状態に近い。

「テストステロンを上げる」と「依存パターンを抜ける」は別の話

NoFap が議論される時、争点は2つの軸が混ざっている。

  • テストステロン軸: 撤回された論文と誤読された数字を根拠に「テストステロンを上げよう」と目指す
  • 依存パターン軸: ポルノとの付き合い方が依存的になっていないか、生活に支障が出ていないかを見る。依存症対策として確立されている枠組み

だから「テストステロンが上がるかどうか」を議論しても、話がずれている。NoFap を始めた創設者の動機は、10代からのポルノ依存だった。テストステロンの話ではなく、依存の話だ。論文が撤回されても、彼の取り組み自体は否定されない。「テストステロンを上げる」というラベルが、最初から間違っていただけだ。

何を判断材料にするか

目標は「依存的なパターンを抜ける」こと。

時間を測ってみる。引き金になる状況を書き出す。問題のあるパターンが減れば、それで進歩としてカウントできる。

挫折しても、自分を責めて潰れない。自分を責めるのを止めるで書いたように、自分を責めるほど次の挫折が早く来る。

判断材料は「テストステロンが増えたか」ではない。「先月よりポルノに振り回されていないか」だ。

参考文献
  • Jiang, M., Xin, J., Zou, Q., & Shen, J. W. (2003). A research on the relationship between ejaculation and serum testosterone level in men. Journal of Zhejiang University-Science A, 4(2), 236-240. (2021年12月に撤回 / Retracted)
  • Park, B. Y., Wilson, G., Berger, J., Christman, M., Reina, B., Bishop, F., Klam, W. P., & Doan, A. P. (2016). Is Internet Pornography Causing Sexual Dysfunctions? A Review with Clinical Reports. Behavioral Sciences, 6(3), 17.
  • Voon, V., Mole, T. B., Banca, P., Porter, L., Morris, L., Mitchell, S., Lapa, T. R., Karr, J., Harrison, N. A., Potenza, M. N., & Irvine, M. (2014). Neural correlates of sexual cue reactivity in individuals with and without compulsive sexual behaviours. PLOS ONE, 9(7), e102419.
  • Snopes (2021). Does Not Ejaculating for 7 Days Increase Testosterone by 45%? https://www.snopes.com/fact-check/increase-testosterone-45-percent/
  • Kelly, D. (2021). Nofap: can giving up masturbation really boost men’s testosterone levels? An expert’s view. The Conversation. https://theconversation.com/nofap-can-giving-up-masturbation-really-boost-mens-testosterone-levels-an-experts-view-157701
X LINE はてブ

こちらもおすすめ

禁欲の効果はすごい!3ヶ月〜1年で起きること【データ検証】
ポルノ

禁欲の効果はすごい!3ヶ月〜1年で起きること【データ検証】

禁欲3ヶ月に到達できるのは全体の約14%。ただしそのうち約85%が半年まで続く。542人、3,345回の禁欲チャレンジから見えた長期禁欲のリアルと、「脳の回路が変わった」と語る人たちの共通点。

禁欲3週間〜1ヶ月の効果と「3週目の壁」の乗り越え方【データ検証】
ポルノ

禁欲3週間〜1ヶ月の効果と「3週目の壁」の乗り越え方【データ検証】

QuitMateの全リセットのうち、3週目に起きるのはわずか3.4%、4週目は1.5%。ここまで来た人はほぼ続く。一方で身体的に分かりやすい変化が少ない時期に「ポルノ禁してるのに人生変わらない」が来る。期待値、自動思考、トリガーパターンを、実データで解説する。

禁欲2週間の効果がすごい!身体と心の変化【データ検証】
ポルノ

禁欲2週間の効果がすごい!身体と心の変化【データ検証】

QuitMateのデータでは、1週間を越えた人の約69%が2週間まで到達している。眠りが整う、エネルギーが戻る、そして2週目には「達成感より無気力」が来る。実際のユーザー投稿データで解説する。

オナ禁の本当の効果
ポルノ

オナ禁の本当の効果

「テストステロンが爆上がりする」「集中力がゾーン入りする」と言われる一方で、「全部嘘、疑似科学だ」と切り捨てる声もある。100日以上続けたユーザーが書き残していたのは、それとは別の話だった。

QuitMateアプリのカテゴリ選択画面
QuitMateアプリのコミュニティ投稿画面
QuitMateアプリの回復プログラム画面
QuitMate

QuitMate

共になら、やめられる

同じ悩みを持つ仲間と支え合える依存症克服コミュニティアプリ。禁酒・禁煙・禁ギャンブルなど、一人じゃないから続けられる。