2025 年次レポート
2025年、QuitMate に新しく登録した人は 4,040人。挑戦の半分は2週間以内に途切れる。それでも、いま続けている人の10人にひとりは、これまでに1年以上の継続を達成していた。崩れやすいのは夜の21時、そして日曜。依存からの回復という非線形のプロセスを、49,398件の投稿と 788,615の応援の記録から描く。
- 4,040人新規登録前年比 +62%
- 66日最長記録の中央値いまもアクティブな1,143人
- 9.8%が最長1年以上およそ10人にひとり
- 21時投稿・リセットのピーク夜・日曜に集中
- 788,615応援1日あたり 約2,160
- 8.1回最長記録までの平均挑戦回数中央値は2回。再発は前提
QuitMate は、依存からの回復を目指す人のためのコミュニティアプリ。ギャンブル、アルコール、過食、ポルノ、たばこ、薬物、SNS、ショッピング、ゲーム、カフェイン、共依存、自由記述の計12カテゴリを横断的に扱う。
本レポートは、2025年1月1日から12月31日までの12ヶ月間にアプリ上で観察された行動データを集計し、QuitMate のコミュニティで起きていることを描き出す。構成は「誰が来たか(母集団)、挑戦のあいだ何が起きるか(経過)、いつ崩れるか(リセット)、どこまで到達したか(継続)、外と比べてどうか(文脈)、依存の種類で何が違うか(カテゴリ)」の順で進む。
本レポートは観察データに基づくものであり、QuitMate の利用が依存からの回復に因果的に寄与することを示すものではない。すべての限界については末尾 Limitations を参照。
1年で、ほぼ倍になった
QuitMate のユーザーベースは 2025年に明確に拡大した。新規登録は前年の 2,487人から 4,040人へ +62% 増加し、累計登録は年末時点で 6,824人に達した。
何をやめようとしているか
2025年に新たに登録された「やめたい習慣」は 3,860件。依存カテゴリ別の内訳は次のとおり。
数値は「登録数」であり「人数」ではない。1人が複数の依存をそれぞれ別の習慣として登録するため、合計はユーザー数と一致しない。
ギャンブル依存が約6割を占める点が目を引く。QuitMate は12カテゴリすべてを横断的に対象とする設計のアプリだが、2025年時点の利用実態としては、ギャンブル断ちを目的とするユーザーの比率が突出している。続くのは過食、アルコール、ポルノ、SNS、たばこで、国内の依存関連相談窓口に寄せられる相談の傾向ともおおむね一致する。
来た人は、どれくらい残るか
本レポートが描くのは、こうして登録した人たちのその後である。前提として、2025年に登録したユーザーがどれくらい定着したかを示しておく(2025年1〜9月登録、3,093人。各時点まで活動が継続していた割合)。
登録から30日後も約半数(47.8%)、90日後も3人にひとり(35.2%)が活動を続けている。以降のセクションで「最長記録」などを集計する母集団は、こうして定着したユーザーに限られる。登録後まもなく離脱した人は、はじめから対象に含めていない(Limitations 1)。
気分は上がり、渇望は下がる
挑戦が続いているあいだ、ユーザーには何が起きているか。2025年の投稿 49,398件は、すべて AI による mood(気分、1〜10)と craving(渇望、0〜10)の解析が記録されている。投稿者の挑戦経過日数別に集計すると、明確な推移が現れる。
挑戦初日(0日目)の平均は mood 3.4・craving 6.0。3〜6ヶ月後には mood 4.9・craving 4.9 へと、気分は約 +1.5、渇望は約 -1.1 変化する。改善が最も明確なのは最初の3〜6ヶ月だ。半年より先は継続するユーザーが100人台まで減って傾向が不安定になるため、本グラフは6ヶ月までを示した(各点のユーザー数はグラフ下に表示)。
本データは、続けたから気分が改善したのか、改善した人だけが続いたのかを区別できない。観察された連動であって因果ではない(Limitations 4)。
声を上げるのは、初週に集中する
2025年の投稿 49,398件を、投稿者の挑戦経過日数別に分けると、最初の1週間に最も集まる。
最も投稿が集まるのは「1〜7日目」で年間 13,986件。0日目から30日目までを合わせると全投稿の67.5%が経過1ヶ月以内に書かれている。再発リスクが最も高いとされる期間に、ユーザーは沈黙していない。1投稿あたり平均 16.0 の応援が返っており(年間 788,615件)、書いた声が読まれずに流れる場ではない。
夜21時、日曜、そして15日
2025年に記録されたリセット(挑戦の終了)は 11,181件。これらが「いつ」起きたかをデータで見ると、3つの軸でパターンが浮かぶ。
投稿のピークも、リセットのピークも、21時
投稿もリセットも、ピークは 21時。続いて 22時、20時。最も渇望が来やすい時間帯、コミュニティが最も稼働する時間帯、挑戦が最も終わる時間帯が、同じ時刻に重なる。
金曜まで耐えて、日月に崩れる
日曜が 1,882件で最多、続いて月曜 1,726件。最少は金曜 1,414件。「金曜まで耐えて、週末に崩れ、日月にリセットを記録する」パターンが見える。週末は飲み会、休日のひとり時間、ストレスからの解放など、依存対象との接触機会が増える時間帯と重なる。
月内では 15日に小さなピーク
31日は対象月が少ないため値が低い。
15日のリセットは 424件で、月内平均(約 360件)を上回る。給料日が15日設定の企業は国内に多く、給料受取後に依存対象(ギャンブル・ショッピング・飲酒等)への支出が起きやすい時期と一致する可能性がある(因果は特定できない)。
崩れる予兆は、データに出る
「いつ」だけでなく「予兆」も観測できる。2025年にリセットされた挑戦について、リセットまでの日数別に、その間の投稿の平均 craving / mood を並べた。
リセットの8日以上前には craving 5.18・mood 5.12 だったものが、リセット直前には craving 5.99・mood 3.96 に達する。渇望は上がり、気分は下がりながら、崩れる瞬間へ近づいていく。リセット直前の状態は、挑戦初日(0日目: craving 5.98・mood 3.67)とほとんど同じ地点に戻っている。
リセット直前に渇望が高い投稿が多いのは自然な面もある(揺れているときに書く)。因果ではなく、観察された予兆として示している(Limitations 6)。
最長記録の中央値は 66日
では、挑戦と再開を繰り返した先に、人はどこまで到達するのか。2025年12月にも QuitMate を開いていて、2025年内に挑戦を始めた 1,143人 に絞り、それぞれの「これまでに達成した最長記録」を集計した。観測ストリークの終端は各ユーザーの最終ログイン日で打ち切っている。
- 中央値
- 66日
- 75%ile
- 163日
- 90%ile
- 358日
- 観測上の最長
- 856日
10人にひとり以上(9.8%)が、いずれかの過去の挑戦で1年以上を継続した経験を持つ。
1人あたり、平均8回の挑戦を経ている
この「最長記録」に至るまでに、ユーザーは何度の挑戦を経ているのか。1ユーザーあたりの挑戦回数は中央値 2回、平均 8.1回(一部のヘビーユーザーが平均を押し上げる。最多は417回)。多くの場合、何度かのリセットを経て、最も長く続いた挑戦が結果的に2ヶ月だった、という構造になっている。再発は失敗ではなく、次の挑戦の出発点として記録されている。
いま、続いている記録
「最長記録」は過去のいずれかの挑戦で達成した値で、現在も継続中とは限らない。QuitMate はリセットすると同時に次の挑戦が始まる設計のため、アクティブなユーザーは常に「現在の記録」を持つ。1,143人について、2025-12-31 時点で進行中の記録を見る。
- 1ヶ月以上 継続中
- 604人
- 3ヶ月以上 継続中
- 351人
- 半年以上 継続中
- 198人
- 1年以上 継続中
- 89人
現在 1年以上の記録を継続中のユーザーは 89人(7.8%)、半年以上は 198人(17.3%)、1ヶ月以上は 604人(52.8%)。コホートの半数以上が、いま1ヶ月以上の記録を保っている。
自助会・治療と同水準のレンジ
この継続率は、外の世界と比べてどの位置にあるのか。カテゴリ別の「現在1年以上 継続中」の割合(n≥30)を、文献で報告される自助会・治療プログラムの参考値と並べる。
| カテゴリ | 人数 | 1年継続中 | QuitMate | 参考(文献) |
|---|---|---|---|---|
| アルコール | 98 | 19人 | 19.4% | AA/TSF: 約24% |
| たばこ | 43 | 8人 | 18.6% | NRT: 約13〜19% |
| ギャンブル | 837 | 54人 | 6.5% | GA: 約8% |
| SNS | 36 | 2人 | 5.6% | — |
| ポルノ | 60 | 3人 | 5% | — |
| 過食 | 89 | 4人 | 4.5% | — |
参考(文献)欄: AA/TSF は Project MATCH(1997、外来の Twelve-Step Facilitation 群で1年間の継続断酒 24%。Cochrane Review(Kelly et al., 2020)も AA/TSF が継続断酒率を高めることを支持・RR 1.21)、NRT は禁煙試験での12ヶ月継続断煙率(おおむね 13〜19%)、GA は Stewart & Brown(1988、参加者の1年断ち 約8%)。研究ごとに対象・追跡期間・「断ち」の定義(完全断酒かハーム・リダクションか、臨床診断か自己申告か等)が異なり、QuitMate の数値(2025年12月時点で1年以上を継続中の割合)との直接的な等価比較ではない。
アルコール・たばこ・ギャンブルで観察された QuitMate 利用者の継続率は、自助会参加者や標準治療プログラムの outcomes 報告と 同水準のレンジ にある。匿名のオンライン・コミュニティでこの水準が観察されることは、リアル世界の自助会へのアクセスが難しい人にとって、QuitMate が補完的な役割を果たしうる可能性を示唆する(因果は主張しない、Limitations 参照)。
「やめる」の実行可能性が、達成率を分ける
最後に、依存の種類によって景色がどう変わるかを見る。以下は 2025年12月に QuitMate を利用していたユーザー の、カテゴリ別の最長記録。
| カテゴリ | 人数 | 最長記録 中央値 | 1年以上 |
|---|---|---|---|
| ギャンブル | 837 | 74日 | 71人 |
| アルコール | 98 | 86日 | 20人 |
| 過食 | 89 | 22日 | 4人 |
| ポルノ | 60 | 47日 | 4人 |
| たばこ | 43 | 97日 | 8人 |
| SNS | 36 | 12日 | 2人 |
| ショッピング※ | 18 | 138日 | 7人 |
| 共依存※ | 16 | 58日 | 1人 |
| 薬物※ | 13 | 43日 | 2人 |
| ゲーム※ | 12 | 34日 | 1人 |
| カフェイン※ | 7 | 19日 | 0人 |
※ ユーザー数 20 未満のカテゴリは中央値の信頼区間が広いため参考値。
最長記録1年以上の達成率を見ると、対象を生活から切り離せる依存ほど高く、毎日の接触が避けにくい依存ほど低い。アルコール 20.4%、たばこ 18.6% に対して、過食 4.5%、SNS 5.6% と約4倍の差がある。「やめる」の実行可能性そのものが、最長記録の分布に表れている。
一方で、サンプル数が極めて少ないカフェイン(7人)を除く11カテゴリすべてに、1年以上の最長記録を達成したユーザーが少なくとも1人いる。達成率の差はあれど、長期継続自体はどのカテゴリでも観察されている。
2025年、QuitMate に新しく登録した 4,040人が、49,398件の発信と 788,615の応援を交わした。挑戦の半数は2週間以内にリセットされる一方、続けている人の10人にひとりは過去のいずれかの挑戦で1年以上を達成している。崩れやすいのは夜21時・日曜で、リセットの数日前には渇望が上がり気分が下がる予兆が現れる。そして再発は、平均8回という回数の中で、次の挑戦へと織り込まれていく。
依存からの回復は線形ではない。挑戦と再開を繰り返した先に、最長記録が積み上がっていく。本レポートはその1年分のログである。
本レポートの限界
- 自己選択バイアス。 QuitMate のユーザーは、自発的にアプリをダウンロードし利用を継続している人に偏っている。とくに「最長記録」等の集計は、登録後に定着したユーザー(母数 1,143)に限定しており、依存からの回復を試みる人口全体を代表するサンプルではない。
- 自己申告データ。 「挑戦の開始・リセット」「経過日数」「カテゴリ」はユーザー自身の入力に基づく。客観的な物質使用検査などによる裏付けはない。
- 言語・地域の偏り。 2025年の投稿の99%以上が日本語で、ほぼすべてが日本国内のユーザーと推定される。本レポートの所見を多言語・他文化圏に一般化することはできない。
- 因果関係を主張しない。 QuitMate の利用が依存からの回復に因果的に寄与したと主張するものではない。本レポートは利用実態の記述に留めている。
- 複数依存・カテゴリ集計の取り扱い。 ユーザーが複数の依存を抱えている場合、それぞれを別々の「やめたい習慣」として登録するため、カテゴリ別の登録数集計は人数ではなく登録数を反映している。
- mood / craving と予兆の解釈。 Section 02 の経過日数別 mood / craving はユーザー単位の平均(各バケットに属するユーザーの平均)で、同一ユーザー内の前後比較ではない。6ヶ月より先は継続ユーザーが100人台まで減り傾向が不安定なため、グラフは6ヶ月までに限定している。Section 03 の「リセットまでの日数別」は投稿単位の平均。いずれも、利用継続によって改善したのか改善した人だけが続いたのか、また「揺れているときに書きやすい」という投稿バイアスを分離できていない。観察された連動・予兆であって因果ではない。
- 「最長記録」算出の打ち切り。 リセットを記録せずに使わなくなったユーザーの挑戦をそのまま計上すると、離れた人の記録だけが見かけ上どこまでも伸び続ける。これを避けるため、各挑戦の終端は、そのユーザーの最終ログイン日もしくは 2025-12-31 のいずれか早い方で打ち切っている。
- 始点の自己申告。 サービス開始(2023年8月29日)より前に「やめ始めた日」を申告しているユーザーがいる。これは過去日付の自己申告でありアプリでの観測値ではないため、最長記録の計算では始点をサービス開始日まで切り詰めている。
- 「現在の記録」とアプリ設計。 Section 04 の「現在1年継続中」等は、QuitMate がリセット時に次の挑戦を自動的に開始する設計に基づき、アクティブな全ユーザー(1,143)を母数としている。「現在進行中の挑戦を持つ人」の定義は他の集計方法ともとり得る。
- 文献比較の方法論的差。 Section 05 で参考に並べた自助会・標準治療の継続率は、サンプル選定基準、評価期間、継続の定義(完全断酒かハーム・リダクションか)などが研究ごとに異なる。QuitMate の数値との並列は「同水準のレンジにある」ことを示すものであり、厳密な等価比較ではない。
- 運営介入の影響。 2025年中のプッシュ通知、メディア露出、UX変更などが、特定日・特定カテゴリの数値に影響している可能性がある。