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終わった挑戦の半分は、4日もたなかった|2.2万件のリセットが描く再発曲線

脳と心の科学

QuitMateには、依存をやめる挑戦が31,650件記録されている。ギャンブル、アルコール、過食、ポルノ。そのうち約2.2万件は、リセット、つまり「またやってしまった」で終わった記録だ。

終わった挑戦の継続日数を並べると、中央値は4日。半分は4日もたずに崩れている。アルコールに限れば、リセットの64%が3日以内に起きていた。

運営者として、この数字を最初に集計したときは正直しばらく画面を閉じた。アプリを作っている人間が見たい数字ではない。

でも文献を調べていくうちに、見え方が変わった。

50年前のグラフ

1971年、ハントという研究者が、ヘロイン・アルコール・タバコの治療後の経過を1枚のグラフに重ねた研究がある。結果は奇妙なほど一致していた。依存の種類が違っても、再発は最初の数週間に集中する。3ヶ月で約6割が再発し、そのあと曲線は平らに近づいていく。

この「最初に急落して、あとはなだらか」という形は、その後も繰り返し確認されてきた。2009年には20の研究をまとめて再分析した論文が、曲線の形が依存の種類を超えてほぼ共通だと示している。タバコを自力でやめようとした人の追跡研究でも、再発の大半は最初の8日以内だった。

つまり。

QuitMateの2.2万件が描く曲線は、50年前から研究で報告されてきた形と同じだった。

複雑な気分ではある。ただ、データを扱う人間としてはこれは良い知らせでもある。形が一致するということは、このアプリの記録が依存の実態をそのまま写しているということだからだ。盛られた自己申告のデータは、この形にならない。

再発曲線:終了した挑戦のうち、その日数まで続いていた割合。中央値は4日で、半分は4日もたずに崩れている。

崩れる前から、波は高くなっている

なぜ最初の数日に集中するのか。理由のひとつは、渇望の波がやめた直後ほど高く、頻繁に来ることにある。海外の研究では、その瞬間ごとの渇望の強さと気分の落ち込みが、その後の再発を予測することが繰り返し示されている。

QuitMateの投稿データにも、同じ予兆が写っていた。リセットで終わった挑戦の投稿28,901件をさかのぼると、気分のスコアはリセットの2週間以上前から下がりはじめ、渇望のスコアは上がっていく。当日の投稿では「渇望に勝てた」という報告が、普段の半分以下まで減る。

波は、来る前から高くなっている。だから記録がある。

曲線には続きがある

個人的に、いちばん見てほしいのはここからだ。

同じデータで「3日を越えた人が1週間もつ確率」を計算すると、69%。そこから先はこうなる

区間継続できた割合
3日 → 1週間69%
1週間 → 2週間73%
2週間 → 3週間84%

数字が、上がっていく。

再発曲線が急なのは最初だけで、1日越えるごとに「次の1日」は安全になっていく。50年前のグラフが後半で平らに近づいていくのは、この同じ現象を裏側から見たものだ。いま3日目の人にとって、今日はたぶん全行程でいちばん急な坂にいる。

崩れたあとの話

それでも崩れる。崩れたら、どうなるか。

QuitMateでは、初回の挑戦が失敗した人の83.8%が、30日以内にまたアプリで活動していた。そして2025年に挑戦した1,143人を見ると、自己最長記録にたどり着くまでの挑戦回数は平均8.1回。中央値でも2回。1回の挑戦で最長記録を出した人のほうが少数派だ。

再発曲線は「1回の挑戦」のグラフにすぎない。回復は、たいてい複数回の挑戦でできている。

4日で終わった記録は、失敗の証明というより、曲線のいちばん急な区間を通過中だという位置情報に近い。次の挑戦は、同じ坂の少し先から始まる。

QuitMateは、その挑戦の回数を一緒に数えて、同じ坂を登っている仲間とつながれる場所として作っている。崩れた日にも開いてもらえるアプリでありたいと思う。


データ: QuitMateアプリの記録(2026年6月12日時点、挑戦31,650件・うちリセットで終了22,920件)に基づく。中央値4日は終了した挑戦のみの値。「3日以内に64%」は終了したアルコールの挑戦2,115件(2026年4月時点)の分布。区間ごとの継続率はアルコールの挑戦2,884件で、アプリを使わなくなった人の挑戦を生存分析の右打ち切りとして処理した値。気分・渇望はアプリがAIで投稿から推定したスコア(気分1〜10、渇望0〜10)で、リセットの15〜30日前の平均は気分4.95・渇望5.35、当日は気分3.66・渇望6.10。83.8%は初回の挑戦が7〜89日で終了した1,026人のうち、リセットの翌々日から30日以内にアプリ利用があった割合。いずれも観察データであり、アプリ利用の効果(因果)を示すものではない。集計方法の詳細はデータと科学的背景へ。

参考文献
  • Hunt WA, Barnett LW, Branch LG. Relapse rates in addiction programs. Journal of Clinical Psychology 1971;27(4):455-456.
  • Kirshenbaum AP, Olsen DM, Bickel WK. A quantitative review of the ubiquitous relapse curve. Journal of Substance Abuse Treatment 2009;36(1):8-17.
  • Hughes JR, Keely J, Naud S. Shape of the relapse curve and long-term abstinence among untreated smokers. Addiction 2004;99(1):29-38.
  • Serre F, Fatseas M, Swendsen J, Auriacombe M. Ecological momentary assessment in the investigation of craving and substance use in daily life: a systematic review. Drug and Alcohol Dependence 2015;148:1-20.
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