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依存症からの回復は「元に戻る」ことではない

回復のヒント Read in English

霧の中で来た道を振り返る人の後ろ姿

247日断酒したあるユーザーが、こんな葛藤を書いていた。

アルコール解禁したいと思う自分がいる。1杯、パートナーとならば大丈夫だと思っている自分がいる一方で、再開してしまうと、どんどんエスカレートして元の依存していた自分に戻ってしまうのではないかという不安、恐れもある。

「元の依存していた自分に戻ってしまう」。長く断酒を続けていると、この感覚にぶつかる。

最初は、酒を飲み始める前の自分に戻ることが回復だと思っていた。でも、しばらく続けて気づく。その自分に戻ったところで、また同じように飲み始めるだけだ。

飲む前の自分には、すでに飲む下地があった

依存症は「問題」ではなく「解決策」だった? でも書いたとおり、依存はいきなり始まるわけじゃない。何かに対する対処として始まる。

つまり、対処したかった何かは、依存になる前から自分の中にあった。

444日断酒したあるユーザーが、ドラマで「インナーチャイルド」の回を観た日の記録にこう書いていた。

自分の中のインナーチャイルドを見つけた。とても泣いてた。まだはっきり思い出せない小さな頃から寂しくて苦しかったんだと。気づいた瞬間から涙が止まらない。この子の傷を癒さない限り、何処かでスリップする。

依存の手前にいた自分も、すでに何かを抱えていた。その何かに対する対処法を探していて、たまたまそこに酒が手の届く位置にあった。最初は本当に役に立ってしまった。

だから、その自分にそのまま戻ったら、また同じ流れになる。同じ痛みに対して、同じ対処法を選ぶ。一度脳の回路ができている分、前よりずっと早く戻る。

「もう普通に飲めるんじゃないか」が来るとき

やめて半年から1年経つと、ふとした瞬間に「もう普通に飲めるんじゃないか」という感覚が来る。

体は健康になっている。家族との関係も改善した。仕事も安定した。これだけ整ったなら、付き合いで一杯くらいなら大丈夫なんじゃないか。

249日続けたあるユーザーが、まさにその瞬間を書き残していた。

今日はパートナーと居酒屋ご飯へ。旅行中もあいまって、最初1杯だけなら良いかと二人で相談して注文した。飲もうと思ってグラスを手に持ち、顔を近づけると、懐かしいアルコールの匂いがした。半年前はその匂いを嗅ぐと気持ちが高揚する感じがあったのだが、今日は、飲むことにより問題行動のあった自分に戻ってしまうことへのおそれが出た。自分の気持ちを正直に出して、ノンアルコールビールを頼み直した。

ノンアルコールに切り替えられたのは、薄皮一枚のところだった。

そこで飲む一杯は、「もう元の自分に戻れた」という確認のためのものだ。昔は普通に飲めていたのだから、戻った今なら飲めるはず、と思う。でも、その昔の自分には、最初から飲む下地があった。

17年やめてもなお、夢でスリップする人がこう書いていた。

先程見た夢は、飲んだあとの「飲んだこと隠したい」とか「もうどうでもいいや」とか「今更やり直すのめどくせぇ」と言った感情が甦っていた。あー嫌だ嫌だ。きっと何年やめていても、一杯飲んだらこんな感じになるんだろうな。

17年積んだ距離も、夢の中の一杯で元の感情に戻ってしまう。

受け入れることが、回復になる

回復は、飲む前の自分に戻ることじゃなく、飲まない自分を新しく作ることだ。

不安を抱えやすい自分、本音を言えない自分、夜中にぐるぐる考えてしまう自分。こうした素地は、依存をやめても消えない。回復は、それらを抱えたまま酒なしで生きる方法を覚えることだ。

それは欠点を直すことじゃない。欠点ごと、自分を受け入れる覚悟をすることだ。

居酒屋でノンアルコールビールを頼み直した249日のユーザーは、同じ日の記録をこう締めくくっていた。

飲酒をしないことも大事であるが、ベースのパーソナリティー障害、ADについて正しく知ることを続けながら、人のせいにせず、自分の人生を自分で引き受ける覚悟を持つことは大事と感じた。

「自分の人生を自分で引き受ける覚悟」。長く断酒している人の記録には、これに似た表現がよく出てくる。

自分を責めるのを止める で書いたとおり、欠点を責め続けるほどストレスが衝動を強める。逆に「これが自分なんだ」と認めると、その欠点が依存を呼び込みにくくなる。完璧な自分を目指すなと言いたいわけじゃない。そもそも完璧な自分は最初から存在しない。

戻るのではなく、続けていく

回復した先にいるのは、酒を飲み始める前の自分でも、飲んでいた頃の自分でもない。別の自分だ。

劇的な変化はない。自分の欠点をひとつずつ知って、その欠点を抱えたまま今日も酒に手を伸ばさない、という日が続いていく。

戻る場所はない。だから、続けていく。そういう日々を、回復と呼ぶのかもしれない。

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