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なぜ依存症になるのか?──脳とこころのしくみ

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ポイント3つでざっくり理解

  • 脳は「期待→行動→ごほうび」のループを強く覚える
  • ストレスで“ブレーキ役”の脳が弱くなる
  • 遺伝・育ち・環境が重なると、依存しやすくなる

1. ドーパミンが「またやりたい」と思わせる理由

「もう一回だけ…」そんな気持ちになるとき、脳ではドーパミンが出ています。これは「気持ちいい!またやろう」と脳に教える物質です。

実はドーパミンは、“ごほうび”をもらう前、期待した時点ですでに出ているんです。だから、脳は「期待→行動→ごほうび」の流れを強く覚え、どんどんその行動にハマっていきます。

脳内報酬学習ループ(VTA→NAcc)


2. ストレスで「やめよう」がきかなくなる

脳には“ブレーキ役”として働く前頭前野があります。冷静な判断をしたり、自分を止めたりする部分です。

でも、ストレスやトラウマ、お酒や薬物の使いすぎで、このブレーキが弱まってしまいます。

脳の検査でも「やめたい」と思っていても快感を感じる部分は活発なままで、ブレーキ役の前頭前野があまり動いていないことがわかっています。

ブレーキとアクセルのせめぎ合い


3. 意志が弱いせいじゃない。リスクが重なっただけ

依存症になるのは、「ダメな人」だからではありません。 いろんなリスクが重なって、そうなりやすくなるだけです。

🔹 遺伝

  • 家族に依存症の人がいると、なりやすい体質を受け継ぐことがあります。

🔹 脳の発達

  • 思春期は「やりたい!」という部分が先に育ち、「やめとこう」と考える力が遅れて育ちます。

🔹 ストレスやトラウマ

  • 子どもの頃の心の傷や、長く続くストレスは、自分を止める力を弱くしてしまいます。

4. 最初は楽しい、でもだんだん逃げ道になる

最初は「楽しいからやる」。でも、だんだん「やめるのがつらいからやる」に変わっていきます。

行動の理由初期慣れてきた頃
楽しみを求めてワクワク・スッキリ感楽しさは薄れる
つらさを避けてあまり強くない苦しさから逃げるために続けてしまう

脳はこう覚えてしまうのです:

  • やめる = つらい
  • 続ける = 少しラクになる

つまり、もう楽しさのためじゃなく、やめないほうがラクだから続けてしまうようになるのです。


5. 孤独や退屈が依存を深くする

ラットパーク実験では、孤独なネズミは薬を飲み続けたのに、仲間と遊べるネズミは薬にほとんど手を出しませんでした。

この実験が教えてくれるのは: 孤独・退屈・希望のなさは、依存を加速させるということです。

QuitMateは「つながれる場所」があるから、ひとりで抱えこまなくて大丈夫です。

孤独ケージとラットパークの対比


6. よくある誤解にご注意

  • 「意志が弱いだけ」 → 違います。脳のしくみが変わっているんです。
  • 「一度ハマったら一生治らない」 → 脳には回復する力があります。

こうした誤解を手放せば、自分を責めることが減り、回復もしやすくなります。


7. 自分チェック:40代以上の方にもおすすめ

気になること脳や心の反応小さな対策
ごほうびを想像しただけでソワソワするドーパミンが強く働いているその場で10秒深呼吸する
イライラするとすぐ何かに頼りたくなるストレスから逃げる癖代わりの行動をスマホにメモしておく
「自分だけダメ」と思う孤独感や思い込みQuitMateで他の人の体験を読んでみる

8. QuitMateの“やさしいサポート”

  • 1分呼吸ガイド:欲求のピーク(約90秒)を乗り越える手助けに
  • 見るだけOKのタイムライン:投稿しなくてもつながりを感じられる
  • トリガーログ:つまずいた時の状況を記録して、癖を少しずつ変えるヒントに

9. おわりに

依存症は「弱さ」ではなく、脳と心ががんばってバランスを取ろうとした結果です。

仕組みを知れば、「ダメだ」と自分を責めるよりも、「じゃあ、どうしよう?」に目を向けられます。

QuitMateは、そのための練習場所です。 読むだけでも、十分すぎるほど立派な一歩です。


参考文献

  1. Koob GF, Volkow ND. “Neurobiology of addiction: a neurocircuitry analysis.” The Lancet Psychiatry (2016).
  2. Volkow ND, Morales M. “The brain on drugs: from reward to addiction.” Cell (2015).
  3. Casey BJ et al. “The adolescent brain.” Ann. N.Y. Acad. Sci. (2008).
  4. Kendler KS et al. “Twin study of alcohol dependence.” Arch. Gen. Psychiatry (2011).
  5. Alexander BK et al. “Rat Park studies of addiction.” Pharmacology Biochemistry and Behavior (1978–1981).
  6. Sinha R. “How does stress increase risk of drug abuse and relapse?” Psychopharmacology (2001).