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エアーベット(架空の賭け)はやめるべき?

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賭けていないのに気になってしまう

ギャンブルをやめた後も、競馬中継を見ながら「3番の馬に1000円単勝」と頭の中で賭けて、レースが終わったら当たったかどうか確認する。こうした”エアーベット”を続けている人は少なくない。エアーベット、シミュレーションベットとも呼ばれるこの行為は、実際にお金を使っていないから問題ないように見える。

ただ、脳科学の研究はそれとは違う結論を出している。

Man is doing paper betting

お金を賭けなくても賭けたくなる理由

ギャンブルをやめても、賭けたい衝動が消えないのは自然なことだ。オッズを見る、予想する、結果をチェックする。あの一連の流れには、長年かけて染みついた高揚感がある。退屈や不安を一瞬で忘れさせてくれる、慣れ親しんだ刺激でもある。

だから「お金さえ賭けなければ大丈夫」と妥協点を探してしまう。これは意志が弱いのではなく、脳の報酬系が変化しているから起きる反応だ。

ただ、ここに落とし穴がある。

想像だけで脳は「賭けている」と認識する

fMRI(脳の活動を画像で見る技術)を使った研究で、面白いことがわかっている。ギャンブル依存の患者にギャンブル関連の映像を見せるだけで、前頭前野や辺縁系など報酬系に関連する脳領域が活性化した(Crockford et al., 2005; Potenza et al., 2003)。

実際にお金を賭けていなくても、ギャンブルに関する刺激を受けるだけで、脳は「ギャンブルをしている」と認識してしまう。エアーベットは、まさにその刺激を自分から作り出す行為だ。

スポーツ心理学でよく知られるメンタルリハーサルと同じ原理が働いている。アスリートが頭の中で動きをイメージするだけで、関連する神経回路が活性化することが確認されている。それと同じことがエアーベットでも起きている。つまり、賭けの回路を毎日トレーニングしているようなものだ。

Man wants to play gamble

見えないところで蓄積する影響

エアーベットの厄介なところは、害が見えにくいことだ。お金は減らない。誰にも迷惑をかけていない。だから「これくらいいいだろう」と続けてしまう。

ただ、水面下では3つのことが起きている。

1つ目は、渇望がじわじわ強くなること。オッズを見比べて予想を組み立てて結果を待つ高揚感を繰り返すたびに、脳は「もっと強い刺激」を求めるようになる。

2つ目は、「勝てたはず」という錯覚が膨らむこと。架空だから損失はゼロなのだが、勝ったときだけ「実際に賭けてれば儲かったのに」と思ってしまう。負けは忘れ、勝ちだけが記憶に残る。認知の歪みそのものだ。

3つ目は、気づいたら本物に戻っていること。最初はエアーだったのに、物足りなくなって「少額なら…」と本物に手を出す。回復の現場では、このパターンは非常によく見られる。ギャンブル関連の刺激への接触が増えるほどスリップの確率が上がることは、研究でも示されている(Hodgins & el-Guebaly, 2004)。

衝動が来たときの具体的な対処法

ギャンブルをやめる具体的なステップでも触れているが、衝動への対処法を事前に持っておくことが助けになる。場面別にいくつか紹介する。

スリルが欲しいとき: 筋トレやサウナ、冷水シャワーが有効だ。アドレナリンを安全に放出できて、終わった後のスッキリ感は賭けの興奮とはまた違う充実感がある。

予想やゲーム感覚が欲しいとき: 将棋や麻雀のオンライン対戦、戦略系のボードゲームアプリなど、頭を使う別のゲームに置き換える。大事なのは、賭けに関連する一連の行動から距離を置くことだ。

手持ち無沙汰で何かしたいとき: タップゲームやパズルなど、賭けと関係ない軽いスマホゲームに置き換えてみる。指先が動いているだけで、意外と衝動は紛れる。

孤独でつらいとき: QuitMateのようなコミュニティで、同じ悩みを持つ仲間の体験談を読んでみる。「自分だけじゃない」と思えるはずだ。

「架空だから安全」は成り立たない

エアーベットが無害であれば、わざわざ研究対象にはならない。

再発リスクが高まる。時間と思考がオッズと試合に占有され、回復に使えるはずのエネルギーが消耗する。そして何より、依存の根っこにある問題に向き合うことが後回しになり、賭けない自分への適応が遅れてしまう。

お金を失わなくても、脳の報酬回路に「ギャンブルの記憶」を供給し続ける行為であることは確かだ。

まとめ

エアーベットは「お金を使っていないから大丈夫」に見えるが、脳はそう区別してくれない。やめたいと思った気持ちを大事にするなら、脳にギャンブルの刺激を送り続けるのは逆効果だ。

まずは「今日、何回エアーベットをしたか」を数えるところから始めてみてほしい。無意識の習慣に気づくだけでも、そこから先の行動は変わってくる。


参考文献
  1. Crockford, D. N., et al. (2005). “Cue-induced brain activity in pathological gamblers.” Biological Psychiatry, 58(10), 787-795.
  2. Potenza, M. N., et al. (2003). “Gambling urges in pathological gambling: a functional magnetic resonance imaging study.” Archives of General Psychiatry, 60(8), 828-836.
  3. Hodgins, D. C., & el-Guebaly, N. (2004). “Retrospective and prospective reports of precipitants to relapse in pathological gambling.” Journal of Consulting and Clinical Psychology, 72(1), 72-80.
  4. Clark, L., et al. (2013). “Pathological choice: the neuroscience of gambling and gambling addiction.” The Journal of Neuroscience, 33(45), 17617-17623.
  5. Jeannerod, M. (1995). “Mental imagery in the motor context.” Neuropsychologia, 33(11), 1419-1432.
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