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ギャンブルでの「トータル勝ち」は本当か?

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「パチンコも競馬も、トータルで見れば勝ってるから」――誰しも一度は耳にしたことがあるかもしれないこのフレーズ。SNSやQuitMateといった依存症支援コミュニティでも「長期的にはプラスだ」と主張する人がいる。しかし、それは果たして事実なのか? 本当に「トータル勝ち」をしている人は存在するのか、その背後に潜む心理や現実について考察してみよう。

そもそもパチンコや競馬で勝てるのか?

Horse Racing

まず知っておくべきことは、ギャンブルがどのように設計されているかということ。パチンコや競馬などは、基本的に胴元が儲かるように仕組まれている。「控除率」や「還元率」といった言葉を聞いたことがあるかもしれないが、これらはその仕組みを示している。

たとえば、パチンコは投入金額に対して約80〜85%が還元される設計だ。つまり、長く遊べば遊ぶほど、最終的に支払った金額の15〜20%は確実に「負け分」として消えていく計算になる。競馬も同様で、馬券購入金額の約25%が主催者側に差し引かれる仕組みだ。「胴元が儲かるようにできている」ことが、長期間にわたって安定して勝ち続けることを非常に困難にしている。

「トータル勝ち」を信じる心理のメカニズム

それでも、ギャンブルに熱中する人は「トータルでは勝っている」と信じてしまうことが多い。これには心理的な理由が存在する。人間の脳は「都合の良いこと」を信じやすく、勝ったときの記憶は強く残り、負けた記憶は曖昧になりやすい。この現象を「認知バイアス」と呼ぶ。

特に「確証バイアス」という心理現象は、自分が信じたいことや期待に沿った情報だけを重視し、それ以外の情報を無意識に無視または軽視する傾向のことだ。ギャンブルでは、勝ったときの記憶を鮮明に覚え、負けたときの記憶は薄れてしまう。結果として、自分がトータルで勝っているように錯覚してしまうのだ。

依存症との関係:なぜ「トータル勝ち」を主張するのか

ギャンブル依存症の人ほど「トータル勝ち」を主張する傾向が強くなる傾向がある。これは、「自分は依存していない」という自己防衛の心理が働いているからだ。実際、依存症の人は「損失補填」や「自己正当化」の心理に支配されやすく、負けを認めたくないために「トータルでは勝っている」と自分に言い聞かせているケースが多い。

依存症の人は、「次こそは勝てる」「負け分を取り戻せる」と信じ続けることで、ギャンブルを継続する理由を作り出している。このような思考パターンが負債を重ね、より深刻な依存症状につながる要因となる。

実際に「トータル勝ち」している人はいるのか?

Gambling Reality

では現実問題として、トータルでプラス収支を維持している人はいるのだろうか?

結論から言えば、極めて少数ながら存在はする。特に競馬やスポーツベッティングの分野では、徹底した情報収集、緻密な分析、感情を排除した資金管理を徹底して行えるプロレベルのギャンブラーがわずかながら存在する。しかし、彼らは極端に少数であり、大半の一般人が長期的に収支をプラスにすることはまず不可能に近い。特にパチンコの場合、偶然の要素が強く、長期間安定して勝つことは現実的には非常に困難だ。

また、そうした一握りの勝者でさえ、人生の多くの時間とエネルギーを犠牲にしていることが多い。一般的に考えれば、時間と健康、心理的負担などのコストを考えると「トータル勝ち」とは言えない側面もある。

「トータル勝ち」を主張する人への対処法

友人やSNSで「トータル勝ち」を主張する人を見かけたら、そのまま信じるのではなく、「認知バイアスが働いている可能性が高く、依存症のリスクがある」と捉えることが大切だ。単に否定するのではなく、「収支の詳細な記録をつけてみること」を勧めてみるとよい。冷静な記録に向き合うことで、現実に気づき、依存から抜け出すきっかけになる可能性がある。

結局のところ、ギャンブルが人生の収支をプラスに導くことは極めて稀であり、多くの人にとっては損失が拡大するリスクの方がはるかに高いことを忘れてはならない。